受援力

最近だれかに頼ったのは、いつでしょう?
慌ただしい毎日の中で、私たちは「人に迷惑をかけないように」とか「こんなことも出来ないヤツだと思われたらどうしよう」、「すべては自分の責任だから」といった理由で、「助けて」「手伝って」と声に出せなくなっていませんか?
「受援力」とは…
他者からの支援を適切に求め、それを受け取る能力のこと。
もとは防災用語ですが、近年その重要性が様々な場面で注目されています。
一人で悩みや問題を抱え込み、誰にも助けを求めることができずにいると、孤立したり自己肯定感が低下したりします。すると余計に「他人に迷惑をかけてはいけない」「自分で何とかしなければ」という思いが強くなり、SOSを出すハードルが上がってしまう。そんな状態での問題解決は難しく、さらに孤立が深まってしまいます。
職場でも、わからないことがあるのに質問や相談ができない。多くの仕事を抱えていてるのに自分一人でどうにかしようとしてしまう。そんな仲間が近くにいるかもしれないし、あなた自身がそうかもしれません。その状況を放置していると、いつか大きな問題が生じるかもしれません。私たちの心身の健康に影響が出てしまうケースも考えられます。だからこそ、職場における受援力=援助を受け取る力(人に頼る力)を高めることが大切なのです。
受援力を身につけるポイント

小さな依頼から始める
日常の些細な相談や確認を「頼る練習」にする。

頼み方を具体化する
状況、困っている点、期待する支援、期限を簡潔に伝える。
例:「資料作成で時間が足りません。○章を明日正午まで確認してほしいです」

自己開示の習慣化
完璧主義や申し訳なさを手放し、「助けてと言っていい」と自分に許可を出す。

感謝と結果共有を必ず行う
支援を受けたら短い報告と感謝を伝え、次につなげる。

人的ネットワークを増やす
日常的に相談できる複数の“サポーター”を持つ。
まずは小さく頼る
→ 伝え方を意識す
→ 支援を受け取ったら必ず報告・感謝する
この循環を続けると、個人の負担軽減と組織の協働力が同時に高まります。受援力は、職場での孤立を防ぎ、業務効率と心理的安全性を高める重要なスキルなのです。

あるクライアントさんは、他人を全くあてにせず、いろんなことを自己責任論で考える人でした。彼の根底には“他者への不信”があるようでした。そんな彼とのセッションが1年を過ぎた頃、「もし知っていたら、教えてほしいんだけれど…」と彼の方から私に質問したのです。その瞬間、私の内からは驚きと同時にうれしさとありがたさが沸き上がりました。私のことを“信頼してもいい”という彼からのメッセージだと感じたからです。
受援力は、SOSを出した側だけでなく、受け取った側にもポジティブな影響を与えます。「頼る・頼られる」関係は一方的なものではなく、相互に作用するものなのです。 仲間を頼ることが職場の心理的安全性を高める第一歩、とも言えそうですね。
