元気をつくる薬膳
何となく不調、ありませんか?
「なんだか体調がイマイチだけれど、受診するほどじゃないな…」それは“未病”のサインかもしれません。東洋医学では、「病気ではないものの“放っておくと病気になる可能性がある状態”」のことを「未病」といい、病気にならないことだけでなく、病気の一歩手前である未病状態を少しでも改善することも大切にします。
未病を改善する「薬膳」
「薬膳」は、東洋医学の理論に基づいた未病を改善する食事のこと。食べる人の体質や体調(証:しょう)に合わせて、食材の持つ機能(作用や性)を大切にする調理方法です。
1人1人の証をキチンと把握するのは、漢方医を受診でもしない限りなかなか難しいもの。そこで今回は、多くの人に共通する「季節ごとに起こりやすい証とその主な症状」、そして季節に応じて取り入れたい食材をご紹介します。
季節ごとに起こりやすい証(しょう)と主な症状
2~5月・暖かい
気うつ 気滞証
イライラ、憂鬱、不安、不眠、喉のつかえ、 胃痛、消化不良、など
5~8月・暑い
気虚証 水毒証 亡津液証
倦怠感、食欲不振、むくみ、めまい、下痢や便秘、関節の痛みやこわばり、など
8~11月・ 涼しい
血虚証 亡津液証
皮膚の乾燥、抜け毛、めまい、不眠、便秘、関節のこわばり、など
11~2月・ 寒い
下焦の虚証
冷え、むくみ、腰のだるさ、頻尿、排尿困難、 など
- 気:生命活動を維持するための根本的なエネルギーのこと。
- 血:全身に栄養を供給し、精神の安定を保つ重要な要素のこと。西洋医学の「血液」と似ているが、より広い概念を持つ。
- 津液(水):体内の水分を総称した概念で、血液以外の体液のこと。
食材の作用
身体を温める 血行促進、冷え改善、消化機能向上 生姜、シナモン、にんにく、唐辛子、羊肉、など |
身体を冷やす 体の熱を冷ます、炎症を抑える、解毒作用 きゅうり、スイカ、冬瓜、緑茶、豆腐、など |
気を補う 疲労回復、免疫力向上、消化機能強化 高麗人参、山芋、ナツメ、もち米、かぼちゃ、など |
血を補う 貧血予防、肌や髪の健康維持、精神安定 ほうれん草、黒豆、レバー、クコの実、黒ゴマ、など |
津液を補う 乾燥防止、潤い補給、便秘改善 白きくらげ、梨、蜂蜜、山芋、豆乳、など |
水分代謝を促す むくみ改善、排尿促進、デトックス効果 冬瓜、ハトムギ、とうもろこしのひげ茶、昆布、小豆、豆乳、など |
気の巡りを良くする ストレス緩和、消化促進、胸のつかえ改善 ミント、陳皮(みかんの皮)、春菊、セロリ、黒酢、など |
血流を促す 血行促進、冷え改善、瘀血(おけつ)予防 紅花、酢、にんにく、玉ねぎ、シナモン、など |
余分な湿気を取り除く 胃腸の調整、湿気による不調改善、関節痛予防 とうもろこし、ハトムギ、山椒、しそ、生姜、など |
毒素を排出する 肝機能向上、炎症抑制、体内の毒素排出 緑茶、ゴーヤ、セロリ、パクチー、昆布、など |
季節に応じて取り入れたい食材の例と、気を付けたい生活習慣
春・2~5月・暖かい | |
〇 摂るべき食べ物:
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× 避けるべき生活習慣:
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夏・ 5~8月・暑い | |
〇 摂るべき食べ物:
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× 避けるべき生活習慣:
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秋・ 8~11月・涼しい | |
〇 摂るべき食べ物:
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× 避けるべき生活習慣:
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冬・11~2月・寒い | |
〇 摂るべき食べ物:
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× 避けるべき生活習慣:
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- 肝:西洋医学の「肝臓」とは異なり、気・血の流れや自律神経の調整を担う重要な臓腑のこと。
- 心:西洋医学の「心臓」とは異なり、血液の循環と精神活動の調整を担う重要な臓腑のこと。
- 腎:西洋医学の「腎臓」とは異なり、生命力の源で成長・発育・老化・生殖機能に深く関わるとされる重要な臓腑のこと。
夏にゴーヤチャンプルーを食べると、ゴーヤや豆腐の作用により胃腸の調子が整ったり心身がクールダウンされたりするのですね。宮崎名物の冷や汁も、夏に摂りたい食材や消化を促してくれるお味噌など、薬膳の観点からも夏にぴったりの食べ物です。
例えばコンビニでスイーツを選ぶとき、冷えが気になる人はミルクティーではなく体を温めてくれる作用を持つシナモンの入ったチャイを選んだり、むくみが気になる人は洋菓子ではなく和菓子を選んだり。無理のない範囲で、自分の体調に合ったものを探してみるのも宝さがしみたいでおもしろそうですね。
そして忘れてならないのは、食べ物だけ整えれば問題ナシ、ではないということ。健康の基盤は生活習慣です。睡眠、運動、食事、そして人との繋がりを意識した生活を送り、未病を改善しましょう。
参考資料: 未病を改善おいしい薬膳レシピブック(神奈川県) / 北里大学東洋医学研究所 / 医学問答(仲野徹・若林理砂) 左右社 2024年 / 漢方media